ビタミンD
ビタミン D は世界的に見ても不足している人の割合が高く、日本でも98%が不足していると発表されています。(2023年 東京慈恵医科大学)
キノコや魚類などの食べ物に多く含まれているビタミンDは、日光を浴びることでも生成される特殊なビタミンであり、毎日充分な量の紫外線を浴びていれば食事から摂らなくても問題ないと言われる栄養素です。
日光浴の目安として、日焼け止めクリームなしで、顔、手足、背中への日光浴を1日1回、夏場は5分から30分間、冬場で1時間程度行うことで、必要量のビタミンDが体内で生成されると考えられています。
日照の少ない生活環境(緯度、季節、気候)やライフスタイルでは、食事からのビタミンD補給が必要です。
ビタミンDの種類
脂溶性ビタミンであるビタミンDは、D2からD7の6種類あり、人体にとって重要なのが植物由来のビタミンD2と動物由来・紫外線由来のビタミンD3です。
D4からD7はビタミンとしての働きが低く、食品にほとんど含まれていません。
D1は、ビタミンD2を主成分とする混合物に対して誤って与えられた名称であり、存在しません。
ビタミンDの働き
ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)は、キクラゲや椎茸などのキノコ類や酵母内にあるプロビタミンD2(エルゴステロール)が紫外線照射を受けることで生成されます。
天日干しの椎茸などのように、日光に当てることでビタミンD量が増加します。
ビタミンD3(コレカルシフェロール)は、魚類や卵に多く含まれているほか、ヒトの皮膚の中にあるプロビタミンD3(7ーデヒドロコレステロール / コレステロールの前駆体)が紫外線照射を受けることで生成されます。
ビタミンD2とD3は肝臓で「ヒドロキシカルシフェロール(25(OH)D)」に変換され、血液中を循環し、必要に応じて腎臓で活性型ビタミンDとなり、小腸、骨、腎臓でカルシウム代謝に関与するホルモンとなり、結腸癌や直腸癌、乳癌、黒色腫、前立腺癌など、種々の癌の成長を抑えます。
腸管でカルシウム・リンの吸収を促進する働きがあり、カルシウムが不足すると尿からカルシウムを回収する働きがあります。
(活性型ビタミンD3製剤は日本で最もよく使用されている骨粗鬆症治療薬です)
また、ビタミンDはIDDM(インスリン依存性糖尿病)の原因の一つであるインスリン産生細胞の自己免疫による障害を予防します。
ビタミンDとカルシウムの関係
ビタミンDは、腸管からのカルシウムの吸収を促進し、血液に入ったカルシウムを骨まで運ぶ働きがあります。
カルシウムは総量の約1%が血液中や筋肉にあり、細胞分裂・ホルモン分泌の調節・白血球の貪食作用・筋肉の収縮などに働いています。
血中カルシウム濃度は常に一定に保たれるため、カルシウムが不足すると骨を溶かして補充したり、過剰になると骨にカルシウムを沈着させたりする副甲状腺ホルモンやビタミンDが働きます。
ビタミンDの過剰摂取
食品摂取からのビタミンD過剰症が起こることは稀ですが、医薬品の使用については十分な注意が必要です。
過剰摂取は、高カルシウム血症(血管壁・肺・腎臓・胃などにカルシウムが沈着・石灰化)、腎障害(尿毒症・腎不全)、高血圧、昏睡、下痢、脱水症状などを引き起こすことがあると言われています。
ビタミンDの不足
ビタミンDの欠乏疾病として、クル病、骨軟化症、O脚やX脚、歩行障害、骨折、圧迫骨折、歯茎が弱る、虫歯になる、筋肉が痙攣するなどありますが、いずれもカルシウム不足による変形や石灰化障害です。