カカオポリフェノール
チョコレートやココアの原料「カカオ豆」に含まれるポリフェノール(抗酸化物質)のことを「カカオポリフェノール」とよびます。
カカオポリフェノールは主にカテキン、エピカテキン、プロシアニジン類で構成され、これらは非常に強い抗酸化力をもち、その抗酸化力は紅茶の4~5倍、緑茶の2~3倍、赤ワインの2倍程度と報告されています。
カカオポリフェノールを摂ることで、おもに以下6つの効果が期待されています。
1.動脈硬化の予防
動脈硬化は、動脈の壁が硬くなり、狭くなることで血流が妨げられる状態を指します。
この状態が心臓の動脈で起こると、虚血性心疾患(例えば、狭心症や心筋梗塞)を引き起こし、脳の動脈で起こると脳卒中(例えば、脳梗塞)を引き起こすリスクが高まります。
新型コロナのパンデミックが起こる前にWHOが公表した「Global Health Estimates」によると、2019年の世界の死因第1位が虚血性心疾患(死者数890万人)、第2位が脳卒中(死者数620万人)でした。
よって動脈硬化の発生を予防することは多くの人の健康寿命を延ばすことにつながります。
動脈硬化を引き起こす原因の一つに、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の酸化があります。
カカオポリフェノールがもつ強力な抗酸化作用はLDLコレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化の予防に貢献します。
2.アレルギーの改善
いまや2人に1人以上が何かしらのアレルギーをもっています。
アレルギーになりやすい体質の人は成長するにつれて、さまざまなアレルギー症状に悩まされるリスクを背負っており、アレルギー症状が次々と現れる「アレルギーマーチ」をいかに防ぐかが重要な課題となっています。
カカオポリフェノールには、アレルギーの予防・改善効果があるとされています。
カカオポリフェノールを含むチョコレートやココアを摂ることで、アレルゲンに対する抗体が作られるのを防いだり、肥満細胞からヒスタミンが放出されるのを防ぎ、アレルギーの発症を抑えるはたらきがあります。
花粉症やダニアレルギー、ハウスダストなどⅡ型アレルギーにも有効とされているので、アレルギー体質に悩んでいる方は、カカオポリフェノールをより多く含むダークチョコレートやピュアココア(無調整の純ココア)を上手に利用しましょう。
ただし、カカオ豆を原料とするチョコレートもココアにもカフェインが含まれているので、摂取量には注意が必要です。
4歳未満の子どもにはカフェインを与えず、別の食べ物や生活習慣の見直しでアレルギー改善に取り組みましょう。
3.脳の活性化・認知症の予防
認知症は世界の死因第7位にランクインする病気で、糖尿病の人に罹患リスクが高いことから“3型糖尿病”とよばれることもあります。
また、健康な人でも65歳以上の高齢になると、年を重ねるごとに記憶や学習など脳の認知機能が低下します。
その大きな原因は、血流量と脳の活動を支えるBDNF(Brain-Derived Neurotrophic Factor、脳由来神経栄養因子)の減少です。
カカオポリフェノールの摂取は脳の血流量を増やし、さらにBDNFを増やす作用があるため、認知症の予防や、脳機能の活性化が期待できます。
“脳の栄養”とも呼ばれるBDNFは加齢とともに減少するため、高齢になるほどカカオ分の高いダークチョコレートやピュアココアなどカカオポリフェノールを多く含む食品を意識的に摂ることが大切です。
4.血圧を下げるはたらき
血管壁の炎症などによって血管が狭くなると高血圧になりますが、カカオポリフェノールには炎症を抑えるはたらきがあるため、狭くなった血管が広がることで血流が改善し、血圧が下がります。
カカオ70%以上のチョコレートを1日25g、1ヵ月間毎日食べて最高血圧・最低血圧がともに低下した研究事例が報告されています。
高血圧を気にされている方は1日25gを目安に継続摂取をお試しください。
5.美容効果(老化防止)
カカオポリフェノールを含むチョコレートやココアは、ポリフェノールを含む食べ物の中でも非常に強力な抗酸化作用をもつことが知られています。
この抗酸化作用によって、体の酸化(老化)の原因である活性酵素が除去されるため、くすみ、肌荒れ、しわ、たるみを防ぎ、若々しい肌へと導いてくれます。
6.疲労回復/精神安定/リラックス効果
カカオポリフェノールには、疲労回復や精神の安定、リラックス効果もあります。
疲労回復:カカオポリフェノールの抗酸化作用が、酸化ストレスや炎症反応を抑えることで、疲労感を軽減する効果が報告されています。
精神の安定:カカオポリフェノールは、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの分泌を促進し、精神の安定やリラックス効果をもたらすことが示されています。
リラックス効果:カカオに含まれるテオブロミンやカフェインもリラックス効果を持ち、これらの成分が相乗効果を発揮することで、ストレス軽減に寄与することが確認されています。
ちなみに、チョコレートを食べると幸福感を感じるというアンケート調査結果がありますが、それはカカオポリフェノールの効果によるものと考えられています。
なお、チョコレートの種類によって幸福感が変わることが研究で示されており、特にカカオ含有量の高いダークチョコレートは、幸福感をもたらす成分が多く含まれているため、より高い幸福感を感じることが多いとされています。