ビタミンB12
ビタミンB12とはビタミンB12は、水溶性ビタミンの一種で、コバルトを含む化合物で、アデノシルコバラミン、メチルコバラミン、スルフィトコバラミン、ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミンがあります。
このうち、食事摂取基準の数値は、日本食品標準成分表に従い、シアノコバラミンの重量として設定されています。
ビタミンB12はおもに動物性食品に含まれており、植物性食品にはほとんど含まれていないとされていますが、一部の腸内細菌(おもに大腸に存在する)はビタミンB12を生合成することが知られています。
ビタミンB12は、赤血球の生成や神経の健康維持に重要な役割を果たしています。
ビタミンB12の働き
ビタミンB12は、以下のような重要な働きを持っています。
赤血球の生成: ビタミンB12は、赤血球を作るために必要な栄養素であり、不足すると貧血を引き起こすことがあります。
神経の健康維持: 神経細胞の正常な機能を保つために必要であり、不足すると神経障害や手足のしびれなどの症状が現れることがあります。
DNAの合成: 細胞の分裂や成長に必要なDNAの合成を助ける役割も果たしています。
ビタミンB12の消化・吸収・代謝
正常な胃の機能をもった成人では、食品中のビタミンB12 の吸収率はおよそ50%とされています。
また、食事当たり2µg以上のビタミンB12を摂取しても生理的には吸収されません。
なお、健康な成人の平均的なビタミンB12 貯蔵量は2~3mgであり、そのうち0.1~0.2%が1日に損失します。
ビタミンB12は数あるビタミンの中で最も体内貯蔵期間が長いビタミンといわれ、3~5年程度の貯蔵が可能とされています。
ビタミンB12の過剰摂取
ビタミンB12は水溶性ビタミンであり、過剰に摂取しても体内で吸収されずに排泄されるため、通常は過剰摂取による健康リスクはほとんどありません。
研究事例によると、大量(500µg/日以上)のシアノコバラミンを経口投与した場合でも投与量の1%程度が吸収されるのみであり、また、非経口的に大量(2500µg/日)のシアノコバラミンを投与しても過剰症は認められていないとの報告があります。
このように、現時点でビタミンB12の過剰摂取が健康障害を示す科学的根拠がないため、耐容上限量は設定されていません。
また、サプリメント等による摂取においても、特殊な吸収機構を有し、体内への吸収量が厳密に調節されているため、健康障害の報告はありません。
ビタミンB12の不足
ビタミンB12が不足すると、以下のような症状が現れることがあります。
貧血: 巨赤芽球性貧血と呼ばれる特定のタイプの貧血を引き起こし、疲労感や息切れ、動悸などの症状が現れます。
※血液検査の結果をみて、赤血球1個あたりの平均的な大きさを表す指標である「MCV(平均赤血球容積)」の数値が高い場合は巨赤芽球性貧血(ビタミンB12欠乏症や葉酸欠乏症)が疑われます。
神経障害: 手足のしびれや痛み、さらには記憶障害やうつ病などの精神的な症状も引き起こすことがあります。
その他の症状: 疲労感、便秘、食欲不振、体重減少などもビタミンB12不足の結果として現れることがあります。
菜食者(ベジタリアン/ヴィーガン)の食事とビタミンB12の補給
ビタミンB12はおもに動物性食品に含まれるため、菜食者の食事内容ではビタミンB12不足に陥りやすいのではないか?と懸念される方がいます。
しかし、ビタミンB12不足にならない菜食者が存在するのは事実であり、善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を豊富に含む海藻などの食品をよく食べる食習慣は、腸内環境を整えることで、ビタミンB12を産生する腸内細菌の活動を間接的にサポートする可能性が示されています。
ただし、具体的なメカニズムや影響については、さらなる研究が必要です。
食事摂取基準における今後の課題
ビタミンB12 については、血液を適正に維持するために必要な量に加えて、ビタミンB12 を必要とする二つの酵素活性を十分に発揮させることができるビタミンB12 摂取量も考慮して、必要量を算定するという考え方もあります。
こうした中、従来から使用されている推奨量2.4 μg/日は、ビタミンB12 の適正な栄養状態を維持するには低い可能性を示唆する論文が出始めており、今後の知見の蓄積次第では、更なる検討が必要となる可能性があります。