食物繊維
1日の摂取目安量
日本人の食物繊維の摂取量は15g以下と非常に不足しており、目標量を男性では20g以上、女性では18g以上とされています。
毎日の排便のためには1日20g、心筋梗塞による死亡率の低下が観察された研究では1日24g以上と報告されており、目標量より多く摂取する必要があります。
1日に野菜300g、芋類100g、果物200gを食べると摂取目安量に近くなります。
過剰症については、稀に下痢症状を起こす場合がありますが、通常の食生活では問題ありません。
歴史
これまでは、「食物繊維はカラダに吸収されない、食べ物のカス」とされてきましたが、1972年、欧米などの先進国で心臓病や糖尿病などが急速に増えているのに対して、アフリカの原住民はこれらの病気にかかる割合が低く、その背景には繊維質が大きく関わっていることが発表され、食物繊維は世界中で注目されるようになり、日本でも1997年に文部科学省科学技術・学術審議会・資源調査分科会が調査して公表された「五訂日本食品標準成分表」により、これまで炭水化物のうちの「繊維」としてきたものを、新たに「食物繊維」として独立させ、それぞれの食品ごとに「総量」「水溶性」「不溶性」を明示することになり、炭水化物(糖質)、蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラルの五大栄養素に続く6番目の栄養素として重要視するようになりました。
2003年、世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)による「食事、栄養と生活習慣病の予防」では、食物繊維は、肥満、糖尿病、循環器疾患、心臓病のリスクを下げると報告し、野菜や果物や玄米など全粒穀物からの摂取をすすめています。
2007年11月1日、世界がん研究基金とアメリカがん研究協会、7000以上の研究から分析した癌予防の報告書では、結腸や直腸の癌の予防との関連があることが報告されました。
食物繊維とは
人間の消化酵素では消化されない食物中のすべての成分であり、体の構成成分やエネルギーとなることはありませんが、5つの栄養素に続く第6の栄養素とされています。
食物繊維には多くの成分が存在し、水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」に区別され、その働きは異なっており、種類も多く存在しています。
《水溶性食物繊維》
摂取した食品を胃内で滞留時間を長くさせる働きがあり、糖質の吸収を抑制、脂質異常症を予防、
血糖値の上昇を緩やかにし、コレステロールの吸収も妨げ、体外に排出されやすくする働きがあります。
また、糖質の吸収速度を緩慢にするため、インスリン産生に負担をかけないように働くことで、糖尿病を予防・改善する効果があります。
●ペクチン
血糖上昇やインスリンの分泌を抑制。
サトウダイコン、ヒマワリ、柑橘類、リンゴなどの果物に多く含まれています。
●グアー豆酵素分解物
マメ科植物クラスタマメの種子(グアー豆)の胚乳部分を粉末にした、増粘剤・安定剤・ゲル化剤とした食品添加物で、 飲料・ゼリー・スープ・健康食品など様々な食品に応用されています。
●グルコマンナン
コンニャクの主成分であり、ブドウ糖(グルコース)を同時に摂取すると血糖値上昇抑制効果があります。
●βグルカン
血中コレステロール値上昇抑制作用、血糖値上昇抑制作用、血圧低下作用、排便促進作用、免疫機能調節作用があります。
●難消化性デキストリン
果物に多く含まれており、血糖値上昇の抑制、コレステロールの吸収を抑制します。
●ポリデキストロース
化学的に合成された人工の水溶性食物繊維です。
飲料などの加工食品に広く利用されていますが、分子量が小さいため、天然の食物繊維と比較すると作用が弱いので、
食物繊維は天然のものから摂取する方が良いとされています。
●イヌリン
牛蒡や菊芋などキク科植物の根茎に含まれており、分解されるとオリゴ糖として善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やし、腸内の環境を整える効果があります。
●アガロース
海藻の紅藻から抽出される寒天の主成分であり、生体物質の分離の濾過材や食品添加物に利用されています。
●アルギン酸ナトリウム
海藻の褐藻(かっそう)である昆布に含まれるヌルヌルやネバネバ成分であり、水溶性食物繊維の中でも、最も高血圧を予防する効果があるとされています。
因みに「アルギン酸」になると不溶性になります。
●カラギーナン
紅藻類に含まれる多糖類であり、菓子の材料、医薬用、工業用として寒天物質の原料となります。●フコイダン
褐藻類のモズク、ワカメ、メカブ、コンブ、アカモクなどに多く含まれ、海藻のネバネバ成分です。
1996年の日本癌学会で制癌作用があるという報告から健康食品として注目され、これまでに抗酸化作用、アポトーシス誘導による抗ガン作用、
抗菌作用、皮膚創傷修復作用、胃粘膜保護作用、胃潰瘍治癒促進作用、血中コレステロール低下作用が報告されていますが、まだ臨床研究の結果段階です。
●ポルフィラン
海苔に含まれ、糖質の吸収を穏やかにし、体重増加を抑制します。
●ラミナラン
アルギン酸ナトリウム 、フコイダンと共に粘質成分であり、海藻やキノコに含まれ、中でもコンブ、特にガゴメコンブには多く含まれています。 抗腫瘍作用、抗血栓作用、高血圧抑制作用があることで知られています。
《不溶性食物繊維》
食物繊維が多い酵素玄米御飯や野菜は、水分を吸収して膨張し、腸を刺激して、ぜん動運動(腸に入ってきた食べ物を排泄するために、
移動させる腸の運動)を盛んにし、食物繊維を分解する腸内細菌を活性化し、便の排泄を促し、腸内環境を改善する効果があります。
排泄が理想的なバナナウンチ(適度の柔らかさ・バナナの形・水面に浮く・醗酵して泡立っている)であれば腸の健康状態が良いことになります。
オナラも1日3回以上出ないと不健康な証拠です。
食物繊維は大腸で酵素分解され、分解の際に乳酸菌などの善玉菌が無臭である水素、窒素、二酸化炭素、酸素、メタンなどを発生させ、肉や五葷(長葱・玉葱・辣韭・韮・大蒜)など硫黄分を分解するウェルシュ菌などの悪玉菌が発生する悪臭の硫化水素(肉卵腐敗臭)、二酸化硫黄、
二硫化炭素、酪酸(バターなど油の腐敗臭)、アンモニア(乾いた尿臭)、ホスフィン(魚臭)、インドール(糞臭)、スカトールなどを排出します。
これが放屁(ほうひ)所謂オナラです。
ガスは1日500ml~2ℓ発生し、85%がカラダ全体からの呼吸により放出され、放出されにくい15%のものが肛門から放出されます。
1日で通常10~20回は出ます。
1日3回以上でないと、腸内で食物を正常に醗酵分解できず腐敗していることになります。
腐敗は悪玉菌を増加させ、老化・病気の原因になります。
オナラや快便は、最大のデトックスです。
第2の脳と言われる胃腸からキレイに健康になりましょう!
胃腸と類似している脳も晴れやかになり、心も健康になります!
●セルロース・ヘミセルロース・リグニン
地球上で最も多く存在する炭水化物です。
植物細胞の細胞壁および繊維の主成分で、繊維素とも呼ばれ、天然の植物質の1/3を占め、綿は殆どがセルロースです。
ゴボウを始めとする野菜や穀類、豆類などの食物繊維で、大腸の働きを促します。
ヘミセルロース・リグニンはセルロースの構成成分とされてきましたが、現在はセルロースと複合合体している別の成分とされています。
●キチン、キトサン
カニの甲羅、エビの殻、貝殻、イカの軟骨、カブトムシなど昆虫の殻の固い物質やキノコや菌類の細胞膜、チーズに多く含まれてる成分です。
キチンは、甲殻類の殻から蛋白質やカルシウムなどの成分を取り除いて精製されたものです。
キチンを熱した濃いアルカリ溶液に浸して、化学処理を施したものがキトサンへと変化します。
処理過程で、キチンとキトサンが混じり合った状態になるため、この2つの物質名を合わせてキチン・キトサンと呼んでいます。
甲殻類の食品アレルギーの原因物質でもあります。
コレステロール値を下げる、肥満防止、高血圧予防、免疫強化、解毒効果があるとされています。
食物繊維の効果
●腸内の有害物質・老廃物・毒・発癌物質を排泄!便秘解消!大腸癌予防!
腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌や発癌物質に変化しやすい胆汁酸の分泌を抑える作用があり、腸内細菌によるビタミンB群の合成、腸内の有害物質・老廃物・毒・発癌物質を排泄し、便秘の解消に役立ち、大腸癌予防になります。
●血液・脂肪・糖尿を抑制!
腸内環境を整えるので、悪玉菌の増殖抑制、急激な血糖値上昇の抑制、血中コレステロールの抑制、肥満、脂質異常症、高血圧、高脂血症、動脈硬化、糖尿病の予防効果があります。
●免疫力アップ!
長寿の高齢者は、食物繊維摂取量が多く、ビフィズス菌などの有用菌が優勢で、老人特有のウエルシュ菌などが劣勢であることが実証されています。
有用菌は腸内腐敗防止、免疫強化、腸内感染の防御、腸管運動の促進といった効果があります。
●肥満防止
水溶性食物繊維は、胃で膨潤(ぼうじゅん:ゲルが液体を吸収して膨張する現象)することで食塊(しょっかい:食べ物を噛み砕き、唾液と混ざった塊)を大きくし、粘性を上げ、胃内の滞留時間を延ばし満腹感を持続させます。
不溶性食物繊維は、食物の咀嚼回数(そしゃく回数:噛んだ回数)を増加させ、唾液や胃液の分泌を促し、食塊を大きくすることで満腹感を持続させます。
18~20歳の女子学生を対象に食事の調査を行ったところ、食事のGI値(炭水化物が消化されて糖に変化する速さの数値)が高い者ほどBMI(肥満値)が高くなり、食物繊維の摂取が多い者ほどBMIが低い結果が得られました。
玄米御飯を食べると腹が重くなり過ぎるという人は、普段の食生活に食物繊維が少ないことから、あまり噛まないで飲み込む習慣があります。
食物繊維の多い食事を摂り、良く噛んで食べることで、唾液から多くの種類の酵素が分泌され、消化されやすくなり、消化器官の老化を改善できます。
唾液(だえき)
正常では1日に1~1.5ℓ程度(安静時唾液で700~800mℓ程度)分泌されます。
消化液として知られる他、口腔粘膜の保護や洗浄、殺菌、抗菌、排泄などの作用やpHが急激に低下しないように、虫歯や口臭の予防効果もあります。
嘔吐の前兆として苦味のある唾液が大量分泌されるのは、嘔吐物に水分を補給して排出しやすくするための働きです。
毎日の食事を楽しむための「甘味」・「酸味」・「塩味」・「苦味」・「うま味」といった5つの味覚は、唾液の中に溶け込み、舌の「味蕾(みらい)」と呼ばれる味覚受容器に届けられることで、味を感じることができます。
唾液が少ないと、味が分かりにくくなり、「味覚障害」「舌炎」に陥ってしまうのです。
シェーグレン症候群、更年期障害や放射線治療、花粉症や血圧の薬を飲んでいる人は唾液が少なくなるので注意して下さい。
唾液を増やすには、・水を沢山飲む・咀嚼回数を増やす・酸味のある酢やレモン、梅干しを食べる・アルカリ食品や海藻を沢山食べる。
因みに弥生時代の咀嚼(そしゃく)回数は4000回、食事時間51分、白米が広がった江戸時代の咀嚼回数は1500回、食事時間22分、そして現代の咀嚼回数は600回、食事時間11分と言われています。
急増する大腸癌
消化がよくできないという人は、白米や肉、パン、麺類など食物繊維の少ない、柔らかい食べ物を好み、あまり噛まずに飲み込んでしまう習慣から消化能力が低下していて食物繊維を上手に分解ができていないことが考えられます。
毎日の排便のためには1日20g、心筋梗塞の予防には1日24g以上の食物繊維を摂取する必要があります。
しかし、現代日本人の多くが食物繊維摂取量15g以下とされており、食物繊維不足が招く大腸癌による2021年癌死亡者数ランキングでは、女性1位、男性2位、総合2位を記録し、年々増えており、厚労省でも男性20g以上、女性18g以上の摂取目標量を設定しています。
これまでは、脂肪が多く食物繊維が少ない動物性食品を中心に摂取する欧米での発症率が高く、穀物や野菜を主体にするアジアなどでは発症率が低かったのですが、日本でも西洋食の普及から大腸癌が急増しています。
2003年世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)でも「食事、栄養と生活習慣病の予防 」より、食物繊維は肥満、糖尿病、心臓病のリスクを下げると報告し、野菜や果物、そして玄米からの摂取をすすめています。
2007年世界癌研究基金とアメリカ癌研究協会でも7,000以上の研究から結腸や直腸の癌に食物繊維が関連すると報告されました。
他にも食物繊維の不足が原因とされる心臓や循環器疾患、肥満なども含めた多くの病気に関連が認められる研究報告が増えています。
肉や魚など動物性食品からでは食物繊維が摂れません。
白米ご飯1膳(150g)からは0.45g、胚芽精米御飯からは1.2g、七分精米御飯からは0.75g、五分精米御飯からは1.2g、玄米ご飯からは2.1g、発芽玄米御飯からは2.7g、酵素玄米御飯では5.8gも摂ることができます。
野菜や果物からも100g中に約2~5gの食物繊維を摂ることができるので、食事量200g~350gの酵素玄米菜食を1日2回で1日の食物繊維目標摂取量を補給することができます。
特に野菜や果物に含まれる食物繊維の多くは、皮、外葉、根などの部分に豊富なので、無農薬の野菜や果物を余すことなく調理することをお勧めします。
食物繊維のある食材をよく噛んで「便秘しない」「胃腸を強くする」「老廃物を貯めない」「活性酸素で腸をキズつけない」「腸内細菌のバランスなどで腸内環境をつくる」などを心がけましょう。
食物繊維の多い食品(100g中の食物繊維単位g)
乾:ワカメ68.9・ヒジキ60.7・
昆布36.5・カンピョウ30.1・海苔26.4・
切干大根20.7・小豆17.8・大豆17.1・小麦10.8・大麦9.6・エンバク9.4・
蕎麦4.3・玄米3
生:おから9.7・納豆6.7・モロヘイヤ5.9・牛蒡5.7・オクラ5・椎茸4.3・空芯菜3.1・
南瓜2.8・筍2.8・人参2.5・薩摩芋2.3・キャベツ1.8・玉葱1.6・林檎1.5・ジャガイモ1.3・大根1.3