ナイアシン(ビタミンB3)
ナイアシン (Niacin) はニコチン酸ビタミン (NIcotinic ACid vitamIN) の略称で、体内に最も多く存在する水溶性ビタミンです。
ニコチン酸が有害物質であるニコチンと混同されないために名付けられました。
炭水化物、脂質、蛋白質の代謝過程で必要な酵素(酸化還元酵素、脱水素酵素)の補酵素としてはたらき、体内で必要なエネルギーの60~70%の産生を担っています。
体内酵素の約40%、500種あまりに関与し、循環系、消化系、神経系の働きを促進します。
脂質の代謝の促進
体を構成する細胞は不飽和脂肪酸と呼ばれる細胞膜によって覆われています。
活性酸素は、この細胞膜内の不飽和脂肪酸を酸化させて過酸化脂質を形成し、他の細胞にも連鎖的に広がり、アトピーや老化の進行、動脈硬化、心筋梗塞、癌など、あらゆる病気の原因として問題視されている物質です。
細胞内に蓄積した過酸化脂質は、アミノ酸「グルタチオン」によって水とアルコールに分解されます。
このとき酸化してしまったグルタチオン「グルタチオンジスルフィド」は、グルタチオン代謝酵素(酸化還元酵素:脱水素酵素)「グルタチオンペルオキシダーゼ」によって還元されます。
このときナイアシンから変換されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADPH)は様々な脱水素酵素「グルタチオンペルオキシダーゼ」の補酵素として働きます。
ナイアシンには脂質の代謝を促進する働きもあり、1日に1,500mgのナイアシン摂取で中性脂肪やコレステロール値が低下することが知られています。
LDL(悪玉コレステロール)の増加を防ぎ、HDL(善玉コレステロール)を増やしてくれる糖尿病に欠かせないビタミンです。
ビタミンEとナイアシンの合剤が高脂血症や動脈硬化の医薬品としても使われています。
精神と睡眠を安定
ナイアシンはセロトニン(神経伝達物質の一種で天然の精神安定剤といわれる)の効果を上げ、精神を安定させ、睡眠などの生体リズムを形成するホルモン「メラトニン」を生合成します。
ナイアシンの欠乏
体内のビタミンB郡で最も多く必要とされ、存在する水溶性のビタミンです。
蛋白質100gにアミノ酸トリプトファンが1g含まれており、16.7mgのナイアシンを生成するので、通常の食生活では欠乏症になる事はありません。
但しトウモロコシを主食としている国の場合、トウモロコシのトリプトファン含有量が少ないため、ナイアシンが欠乏することがあります。
またアルコールの大量飲酒やビタミンB6の不足もナイアシン欠乏の原因になります。
欠乏すると、口舌炎、食欲不振、下痢、胃痛、神経痛、無気力、不眠症、めまい、頭痛、皮膚炎、抑うつ症、神経症、認知症、小児の場合の成長障害、ペラグラなどの症状があります。
ナイアシンの過剰
治療による薬の投与など以外に普通の食生活においては問題ありません。サプリメントによる過剰摂取「ナイアシンクラッシュ」は、顔の紅潮や掻痒感(むずがゆくなること)や胃腸障害、 肝毒性、消化性潰瘍の悪化などの副作用がありますが、服用をやめればすぐに治まるそうです。
アルコール分解作用
摂取したアルコールは、肝臓でアルコール脱水素酵素(ADH)によりアセトアルデヒトに分解されます。
アセトアルデヒドは、頭痛や吐き気、悪酔いや二日酔いなどの元凶となる成分です。
アセトアルデヒドは、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)により無毒化されます。
ナイアシン(ニコチン酸)は、アルコール脱水素酵素(ADH)やアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の補酵素です。
アルコールの摂取量に対してナイアシンが不足すると、肝臓での代謝に負担が増してしまいます。
呑みすぎにより、アルコール脱水素酵素(ADH)の分解が追いつかなくなると肝臓の細胞内にあるミクロソーム・エタノール酵素(MEOS)もアルコール分解をします。
このミクロソーム・エタノール酵素(MEOS)の働きに、ビタミンB1が大量に消費されてしまいます。
ナイアシンは水溶性
植物や動物の体内では水に溶けた状態で存在してます。
水に溶けやすいので、野菜などを洗う際は手際よく素早く洗うようにしましょう。
また長く水につけているとどんどんと流失してしまいます。
水道水に含まれる塩素にも弱いのでナイアシンが減少します。
調理の際の煮汁、ゆで汁への流失が大きいのですが、食事の際に汁も一緒に摂ることで、ナイアシンを摂取することができます。
ナイアシンはアルカリに弱い
ビタミンB1、B2と同じく、弱酸性です。
重曹(炭酸水素ナトリウム)などのアルカリ性のものと一緒に料理すると減少します。
含有量の多い食品
落花生17mg、舞茸9.1mg、エリンギ8.1mg、松茸8.0mg、エノキ6.8mg、シメジ6.6mg、胡麻5.3mg、ナメコ4.7mg、椎茸3.8mg、玄米2.9mg、 トウモロコシ2.2mg、グリンピース2.1mg、シソの実1.8mg、南瓜1.5mgなど